いまや華々しく世界のランウェイを闊歩する彼ですが、その足跡は決して平坦なエリートコースではありませんでした。国内の「東京ガールズコレクション(TGC)」で見せてきた歴代のステージでは、独自のダンスパフォーマンスを融合させた前例のないウォーキングで常に観客の度肝を抜いてきました。しかし、彼が目指したのは国内の評価に甘んじることではなく、モード界の最高峰であるヨーロッパへの直接進出でした。
パリの有力モデル事務所との契約を勝ち取るため、彼は日本での華やかな肩書きを完全に封印。2024年1月から1年半、約600日間にわたり密着したドキュメンタリー『ラウール On The Runway』(Amazon Prime Video配信)では、その赤裸々な舞台裏が克明に記録されています。地下鉄を乗り継ぎ、重いブック(作品集)を抱えて連日十数件のオーディションを回る日々。言葉の壁にぶつかり、冷淡に書類を突き返される屈辱を味わいました。
映像内では、落選が続いた夜に「人生で最もきつかった」と本音を吐露する痛々しい瞬間も収められています。しかし、彼は自らの弱点から逃げず、現地のウォーキングコーチとマンツーマンで一歩一歩の接地角度や目線の高さをミリ単位で修正。無名の東洋人モデル候補としてゼロから泥臭く這い上がった経験が、現在の揺るぎない立ち居振る舞いの背骨となっています。