漢字の筆順や形状がどうしても記憶から抜け落ちてしまうときは、その文字が古代においてどのような情景から誕生したのかという「郵の漢字の成り立ち」に立ち返ることが極めて有効です。
「郵」は古代中国において、境界や宿駅を表す「垂」と、集落や都市を意味する「邑(おおざと)」が合体して成立した形声文字です。その原義は、広大な国土に張り巡らされた「辺境の宿場町・中継通信拠点」を指していました。
古代の通信制度では、早馬に乗った使者が公文書や軍事機密を運ぶ際、馬を乗り継ぎ、食事を取り、次の使者へとバトンを渡す中継基地が必要不可欠でした。この「馬を乗り継ぐ場所・宿駅」を意味したのが「郵」という漢字です。後に近代郵便制度の創始者である前島密らが、イギリスのポストシステムを日本に導入するにあたり、「郵便」「郵券(切手)」という訳語を採用したことで、私たちの日常生活に深く根付くこととなりました。
「境界の駅(垂)」と「宿場集落(邑)」が組み合わさって生まれたという文化的文脈を思い描くことで、左側の重厚な宿駅の骨組みと、右側に佇む集落のシンボル(おおざと)という造字構造が、単なる記号から鮮やかな情景へと昇華されます。