裁判員裁判として異例の長期審理となった一審判決において、最大の論点は被告の責任能力でした。公判では2つの異なる精神鑑定結果が提出され、検察側鑑定人は「妄想性障害はあるが犯行当時は完全責任能力があった」、弁護側鑑定人は「重度の妄想性障害により心神喪失または心神耗弱の状態だった」と主張が真っ向から対立しました。
これに対し、京都地裁の判決理由では以下の点が極めて厳格に判断されました。
① 妄想の影響範囲の限定性:
「小説を盗まれた」という動機の形成には妄想の影響があったものの、手段としてガソリン放火を選び、被害を最大化させるために第1スタジオを選定した計画性には妄想の直接的影響は見られないと結論づけられました。
② 善悪の判断能力と行動制御能力:
犯行直前に躊躇する様子や、警察に追われて逃走を図った行動などから、自身の行為が重大な犯罪であることを明確に認識していた(完全責任能力の保持)と認定されました。
結果として裁判所は弁護側の主張を全面的に退け、求刑通り死刑を選択する判決を言い渡しました。