飛ばさないとはいえ、ヤマアラシの防衛力は全陸上生物の中でもトップクラスに危険だ。彼らは敵に遭遇すると、まず背中の針を逆立てて体を大きく見せ、尾を振ってカサカサと警戒音を鳴らす。それでも敵が引き下がらない場合、後ろ向きのまま猛スピードで相手に突進する。
針の先端には目に見えないほど細かい返り鉤(かえし)がついており、一度皮膚に刺さると抜くのが非常に困難な構造になっている。刺さった針は筋肉の動きによってさらに奥へと潜り込んでいくため、野生のヒョウやライオンであっても命を落とすことがあるほどだ。飛ばす必要がないほど強烈な「接触兵器」を、彼らは既に備えているのである。