運動器疾患の臨床動作分析において、初学者が最も混乱しやすい論点がデュシェンヌ歩行との違いです。どちらも根本的な機能破綻の源流は「支持脚側の中殿筋機能不全」にありますが、現れる外見的現象と生体力学的戦略は全く対照的な動きを示します。
トレンデレンブルグ歩行が「筋力不足に耐えきれず骨盤が反対側へ落ちてしまう現象(不全の露呈)」であるのに対し、デュシェンヌ歩行は「落ちそうになる骨盤を食い止める、あるいは中殿筋の筋張力要求を減らすために、自ら体幹を患側へ大きく倒す代償運動」です。体幹を支持脚側へ傾斜させることで、身体の重心線を股関節回転中心へと近づけ、体重による内転モーメントを強制的に減少させています。
変形性股関節症が進行した患者の臨床観察では、疼痛の増悪に伴い、初めはトレンデレンブルグ歩行を呈していた症例が、無意識に体を大きく揺らすデュシェンヌ歩行へと移行するケースが頻繁に確認されます。関節への剪断力を減らすための身体の防御反応(逃避運動)としての側面を帯びている点が重要です。