ネット上の相談窓口やSNSで最も多く見受けられる誤解が、「書類送検されたら前科持ちになるのか」という疑問です。法的な観点から明確に整理すると、書類送検された段階では前科は一切つきません。
前科とは、裁判所によって有罪判決が言い渡され、それが確定した履歴を指します。刑事訴訟法における有罪判決には、法廷で開かれる正式裁判(公判請求)による懲役刑や禁錮刑だけでなく、書面審査だけで命じられる略式起訴による罰金刑・科料も完全に含まれます。「裁判所に行っていないからセーフ」と思い込み、送られてきた納付書で罰金50万円を支払って終了したとしても、それは法的な前科1犯として生涯記録に残ります。
一方で、「前歴」とは警察や検察などの捜査機関から犯罪の容疑をかけられ、被疑者として捜査対象になった履歴を意味します。書類送検された事実、あるいは逮捕されたものの証拠不十分や示談成立で不起訴処分になった事実は、前科ではなく「前歴(逮捕歴・捜査歴)」として警察庁や検察庁のデータベースに厳重に保管されます。前歴は一般の戸籍や住民票に記載されることはなく、企業が公的照会で閲覧することも不可能です。
運命を分けるのは、書類送検された後の検察官による「起訴不起訴の判断」です。日本の刑事裁判の有罪率は99.9%を超えるため、起訴された時点で前科を回避することは極めて困難になります。だからこそ、捜査が在宅で進んでいる間に迅速な示談交渉と不起訴処分を目指す初動対応が勝敗を決定づけます。