日本乳業協会の資料によると、この切欠き表示が誕生したきっかけは、1993〜1995年頃に行われた農林水産省と視覚障害者団体による実態調査にさかのぼります。当時、視覚障害者から「紙パックの牛乳とジュースや麦茶が区別できない」「どれが開け口か分からず、反対側から無理やり開けてしまう」という切実な声が多数寄せられました。
これを受け、容器メーカー、乳業各社、関係省庁が協議を重ね、試行錯誤の末に生み出されたのが「開け口の反対側のツバ中央に半径6.5mmの円弧状の切り欠きを1個入れる」という共通仕様でした。この位置決めには極めて合理的な理由があります。
もし開け口側そのものに切り欠きを作ってしまうと、開封時に指を掛ける面積が減って開けにくくなったり、注ぎ口の密閉強度が低下して液漏れの原因になったりします。「あえて開け口の反対側に目印を置く」ことによって、紙パックの密封性や強度を一切損なうことなく、触覚インターフェースとしての機能を完璧に両立させたのです。この方式は2001年にJIS規格(JIS S 0021:高齢者・障害者配慮設計指針)として正式に規格化されました。