小円筋の機能不全を正しく理解するためには、まずその精緻な解剖学的配置を把握する必要があります。小円筋は、肩甲骨の後面外側縁の上部3分の2から起始し、上腕骨大結節の最下部(およびその直下の骨体部)へ停止する細長い筋腹を持ちます。
小円筋の主な作用は、肩関節の外旋(腕を外側にねじる動き)および水平伸展(腕を水平に保ったまま後方に引く動き)です。しかし、運動学的にさらに重要なのは「関節の安定化」という静的・動的な保持機能です。腕を挙上したり大きく振ったりする際、大きなパワーを出す大胸筋や三角筋の収縮によって上腕骨頭は上方や前方にズレようとします。小円筋は他の回旋筋腱板とともに骨頭を肩甲骨の関節窩(受け皿)へと強力に引きつけ、軸がブレないようコントロールしています。
また、神経解剖学的な最大の特徴として挙げられるのが「支配神経:腋窩神経(C5〜C6)」です。回旋筋腱板の中で、棘上筋と棘下筋は肩甲上神経、肩甲下筋は肩甲下神経に支配されていますが、小円筋だけは三角筋と同じ腋窩神経の支配を受けます。この走行ルートが、後述する特有の絞扼障害や神経痛を引き起こす決定的な要因となります。