『桜の時』が音楽ファンの間で「職人芸」と称賛される大きな理由が、編曲を手掛けた島田昌典氏とのタッグによる極めて高度なコードプログレッションです。
キーボードとホーンセクションの華やかなファンファーレで幕を開けるイントロから、Aメロ・Bメロにかけてはメジャーとマイナーを絶妙に行き来するジャジーなテンションコードが多用されています。特にギターで弾き語りを行う際、一般的なアコースティックギターのローコード(CやGなど)だけではこの独特な浮遊感を再現できず、テンションノート(9th、maj7、m7-5など)を正確に押さえる技術が求められます。
また、カラオケにおける歌唱難易度も極めて高い部類に入ります。裏声(ファルセット)と地声の切り替えが目まぐるしく、aiko特有の「拍の裏から入るシンコペーション」が連続するため、リズムキープを油断すると曲の疾走感に置いていかれます。しかし、この一筋縄ではいかない符割りこそが、聴き手に心地よい中毒性を与える最大の要因です。