爪囲炎(そういえん)とは、爪の周囲を取り囲む皮膚組織(爪郭:そうかく)に細菌が侵入し、急性または慢性の炎症を引き起こす皮膚疾患です。臨床現場での症例を分析すると、その発症契機の多くは日常生活における些細な手指のトラブルに起因しています。
最も典型的な引き金となるのが原因としてのささくれや甘皮の逆剥け、深爪、指しゃぶり、爪を噛む癖(咬爪癖)です。これらの行為によって皮膚のバリア機能が破壊され、微細な傷口から皮膚の常在菌である黄色ブドウ球菌やレンサ球菌などが皮下へ侵入します。手指を水仕事や洗剤に頻繁に晒す環境にある方や、ジェルネイルの施術・オフ時に甘皮を過度に処理した際にも細菌感染のリスクが跳ね上がります。
爪囲炎を発症した際、指先が脈打つようにズキズキと激しく痛むのには解剖学的な理由があります。指先は知覚神経が極めて密に分布しているうえ、皮膚の下が強靭な線維組織(線維性中隔)で細かく区切られた閉鎖空間となっています。そのため、細菌との戦いによって生じた炎症性の浸出液や膿が溜まると組織の内圧が急激に上昇し、逃げ場を失った圧力が神経を強く圧迫して特有の拍動痛を引き起こすのです。