『人にやさしく』の歌詞において最も鮮烈なインパクトを与えるのが、サビで響き渡る渾身の「ガンバレ!」という叫びです。しかし、この言葉の背景にある感情は、世間一般に流通している安直なポジティブシンキングとは明確に一線を画しています。
甲本ヒロト本人が過去の音楽誌インタビューやドキュメンタリー特番で明かしてきた証言によると、この曲が作られた当時、バンドはまだ世に出ておらず、将来への不透明感や拭えない孤独感に苛まれていました。「気が狂いそう やさしい歌が好きで」というあまりにも生々しい歌い出しは、日常のなかで押しつぶされそうな脆い精神状態をそのまま吐露したものです。
つまり、あの圧倒的な「ガンバレ!」は、強者が弱者に対して上から目線で投げかける激励ではありません。ドン底でもがき苦しむ自分自身に向けて放たれた叱咤であり、同時に同じ痛みを抱える名もなき「あなた」への等身大の共感でした。だからこそ、どれほど心が擦り切れたリスナーであっても、説教くささを感じることなく魂に直接届くのです。