作業中にボルトやナットの頭部を丸めてしまう「なめる」トラブルは、工具の接触面積と作業者の力のかけ方に起因します。スパナ使用時に強い力を加えると、先端が外側に押し広げられる「口開き」が発生し、角部に応力が集中して角を削り取ってしまいます。業界団体の技術資料や実験データでも、スパナによる最大締め付けトルクは、同サイズのメガネレンチに対して約40%から50%程度で限界点に達することが示されています。
ネットコミュニティや質問サイトで議論が絶えない「ラチェットレンチで本締めは可能か」という問いに対しては、工具のグレードとギア構造によって明確な線引きが必要です。JIS規格をクリアした主要工具メーカーのラチェットコンビネーションレンチは、規定トルク範囲内での本締めを保証しています。しかし、錆び付いたボルトの初期緩めや、パイプを柄に差し込んで過大なトルクをかける行為は、内部のパウルや歯先を一瞬で破損させるリスクを孕んでいます。
プロの現場では「緩め始めと最後の本締めはメガネレンチ、中間域の早回しはラチェット」という工程分離が基本原則として徹底されています。