事件後の東海テレビは、経営陣の刷新とともに長期にわたる再生への道を歩むことになりました。岩手県庁やJA全農いわてへの度重なる公式謝罪だけでなく、被災地産品の消費促進キャンペーンや、岩手県内での農業支援ボランティアに従業員を派遣するなど、地道な償いの活動を継続しました。
特筆すべきは、東海テレビがこの大失態を風化させず、自社のドキュメンタリー制作において「マスメディアの傲慢さと構造的病理」を極めて冷徹に見つめ直す姿勢へと転じた点です。後に文化庁芸術祭大賞などを受賞し、劇場公開されて大きな反響を呼んだドキュメンタリー映画『さよならテレビ』(2019年制作・2020年公開)では、自社の報道現場にカメラを入れ、セシウムさん事件の傷跡や下請け構造、視聴率至上主義に喘ぐテレビマンの生々しい姿を一切の美化なく描き出しました。
2026年現在の東海テレビは、放送事故防止のための自動検知AIシステムや厳格なデータ管理プロトコルを導入し、放送システムの安全工学においては業界屈指の基準を確立しています。岩手県産米との関係性についても、継続的なPR支援やフェア開催を通じて長年の溝を埋める努力を続け、風評被害の記憶を教訓として継承し続けています。