ダムの堤頂部がそのまま幹線道路になっている風景は、全国的にも極めて珍しい。津久井湖を臨む国道413号は、湘南方面や八王子方面を結ぶ交通の要衝として日中も多くのトラックや乗用車が交錯する。車窓から眼下に広がるエメラルドグリーンの湖面と、はるか下方に潜む相模川の谷筋。その落差は高所恐怖症でなくとも思わず足がすくむほどのダイナミズムを誇る。
四季折々の表情もこのドライブルートの醍醐味だ。春には湖畔を彩る数千本の桜が水面に映え、秋には丹沢山地の裾野が鮮やかな紅葉に染まる。早朝、まだ交通量が少ない時間帯に天端近くのパーキングに車を止めると、静寂の中で湖面をなでる風の音だけが聞こえてくる。観光客でにぎわう道志みち(国道413号の先)へのアプローチとしても愛されるこのルートだが、その足元が巨大な水没歴史の上に成り立っていることを知るドライバーはそう多くない。