日本料理の現場や調理のプロが必ず実践しているのが、焼成前の綿密な下拵えです。このわずか数分の工程を挟むだけで、仕上がりの柔らかさと風味のクリアさが劇的に変化します。
まず行うべきは、「塩振りによる浸透圧脱水」です。メカジキの切り身の両面に、重量の約1%(切り身1切れ100gに対して約1g、ひとつまみ程度)の塩を均一に振ります。そのまま室温で約10分間置くと、浸透圧によって表面にじんわりと余分な水分が浮き上がってきます。この水分こそが生臭さの元凶であるため、清潔なキッチンペーパーで身を崩さないよう優しく押さえ、徹底的に拭き取ります。
さらに臭みが気になる場合や鮮度が落ちている切り身の場合は、塩を振る前に少量の「料理酒」を全体に振りかけて5分置き、ペーパーで拭き取る工程を加えると、酒の有機酸とアルコール揮発作用によるマスキング効果で雑味が完全に消え去ります。
下処理の仕上げとして欠かせないのが、「薄力粉または片栗粉のコーティング」です。ペーパーで水分を拭き取った切り身に、茶こしなどを使って片栗粉を極薄く均一にはたきます。この粉が加熱時に水分と結びついて糊化(アルファ化)し、身の内側に肉汁を閉じ込める強固な「保水バリア」を形成します。同時に、後から加える照り焼きダレを適度にとろみづかせ、魚の表面に均一に密着させる役割も果たします。