ネット上のブログやSNS、知恵袋の投稿を調査すると、「芽が出たじゃがいもを貸し菜園の隅に植えたら、3〜4個の芋が何事もなく収穫できた」「子どもの保育園で配られた食用芋をプランターに入れたら立派に育った」という成功談が散見されます。こうした声がある以上、「植えるのは絶対に不可能」というわけではありません。生命力の強い植物であるため、条件さえ揃えば食用芋であっても一定の生育を見せるのは事実です。
しかし、こうした成功談には「生存バイアス」と「見落とされがちな代償」が潜んでいます。現場のベテラン菜園愛好家や農業指導員への取材・ヒアリングでは、次のようなリアルな証言が共通して得られました。
「ネットで『簡単にできた』という記事を見て真似する初心者が非常に多いのですが、現場で見かける失敗の多くは途中で茎が黄色くなって枯れるモザイク病です。運良く収穫できたとしても、直径3〜4センチのピンポン玉サイズが数個採れる程度。『せっかく高級な野菜の培養土とプランターを買ったのに、1袋100円相当の小芋しか採れず大赤字だった』と苦笑いする方が大半です」
植物としてのじゃがいもは、1個の種芋から芽が伸びて光合成を行い、地下の「ストロン(匍匐枝)」と呼ばれる地下茎の先端を肥大化させて新しい芋を作ります。健全な種芋であれば初期生育の勢いが強く、太い主枝がぐんぐんと立ち上がりますが、芽が出すぎた食用芋はエネルギーを消耗しきっており、細く弱々しい茎しか出せません。結果として葉の面積が足りず、地下に十分な養分を送り込めないままシーズンを終えてしまうのです。