グローブの構造を吟味する際、最も議論の的となるのが「外縫い(アウトステッチ)」と「内縫い(インステッチ)」の構造的相違です。また、見た目が極めて似通っている「4輪用」と「レーシングカート用」の違いを理解していないエントラントも少なくありません。命とフィーリングに関わるこの2つの差異を解明します。
まず、縫製の違いについてです。伝統的な「内縫い」は、布地の端面と縫い代がグローブの内側(指に触れる側)に収められています。外観がスマートで縫製糸が外的な摩擦で擦り切れにくいため耐久性が高く、製造コストを抑えやすいためエントリーモデルに広く採用されています。しかし、ステアリングを強く握り込んだ際、爪先や指の関節に縫い代の段差が食い込み、違和感や鬱血による指先の痺れを引き起こすケースがあります。
これに対し、トップカテゴリーで事実上の標準となっているのが「外縫い」です。布地の接合部を指の外周側に出して縫製するため、グローブ内部は完全なフラット状態が保たれます。ステアリングを握り込んでも指先に一切の圧迫痕や不快な当たりが発生せず、素手に近い極限のフィジカルコンタクトが実現します。一度外縫いのダイレクト感を体感したドライバーが内縫いに戻れないと言われるのは、この「異物感の完全な排除」に起因します。
次に、4輪用とカート用グローブの違いです。最大かつ致命的な違いは「耐火性能(ノーメックス等のアラミド繊維使用)の有無」にあります。カートは密閉された車体構造を持たないため、クラッシュ時に火災の危険性よりも路面に放り出された際の耐摩擦性能や防風性が重視され、ナイロンやポリエステル等の化繊が主原料となります。これらを4輪クローズドボディの車内で使用した場合、万一の車両火災時に化繊が熱で融解し、掌の皮膚へ融着して重篤な熱傷を引き起こす極めて危険な事態に陥ります。JAF公認レースや主要サーキットの走行会規定でカート用グローブの使用が厳格に禁止されているのは、この明確な物理的理由が存在するからです。