家族社会学の知見に照らし合わせると、出生前診断の受検を巡る問題は、単なる医療技術の選択ではなく、「夫婦間の心理的バウンダリー(境界線)の確立と合意形成の試練」であるといえます。
実母や義両親からの「私たちの時代にはそんな検査はなかった」「命を選別するなんて冷たい」といった昭和・平成的な家族観からの干渉に晒され、罪悪感を抱く女性は後を絶ちません。しかし、生まれてくる子どもの命と人生に最終的な責任を負うのは、祖父母ではなく夫婦ふたりです。外野の倫理観に振り回されることなく、ふたりの独立した核家族として意志を決定する自立心が求められます。
受検をおすすめできる人
- もし「陽性」という結果が出た場合、取り乱さずに羊水検査へ進み、妊娠継続か中断かの冷徹な意思決定を夫婦で下す覚悟がある人。
- 染色体異常が判明した場合でも中絶せず、出産前から専門医療機関の手配や療育資金の準備を論理的に進めたい人。
- 漠然とした妊娠中の不安を科学的エビデンスによって軽減し、残りのマタニティライフを精神的安定とともに過ごしたい人。
受検に極めて慎重になるべき人
- 「陽性が出たらどうするか」を夫婦で一度も話し合っておらず、陽性の告知を受けた途端に激しいパニックに陥るリスクが高い人。
- 「陰性というお墨付きをもらって安心したい」という気休め目的だけで、陽性適中率の低さ(偽陽性の可能性)を理解していない人。
- どのような障害であっても中絶する意志が1ミリもなく、「知ること」が自分自身の精神的重荷にしかならないと自覚している人。