陽子線は「がん病巣の奥には突き抜けない」という優れた物理的特性を持つ。だが、この極めて鋭利な照射特性こそが、特定の臓器や病状において致命的な弱点へと転じる。
特に呼吸によって位置が常に変動する肺や肝臓、あるいは蠕動運動を繰り返す胃や小腸といった消化管近傍の腫瘍に対しては、正確な照射が物理的に困難を極める。微小な位置ズレが命取りとなり、狙った腫瘍を撃ち撃ち損ねるか、最悪の場合は隣接する正常な管状臓器に穴をあける穿孔(せんこう)のリスクが高まるからだ。すべての部位、すべてのがん進行度に対して万能に機能するわけではないという技術的な制約は、治療法選択における厳然たる真実である。