松島トモ子さんの半生を語る上で避けて通れないのが、1986年1月にアフリカ・ケニアで起きた猛獣襲撃事故です。日本テレビ系のドキュメンタリー番組『すばらしい世界旅行』の撮影中、現地ナイロビの動物孤児院(コーネリアス・バン・デル・ポスト野生動物保護区)において、信じがたい悲劇が立て続けに彼女を襲いました。
最初の悲劇は1月28日、生後1年半ほどのライオンの群れと戯れるシーンの撮影中に発生しました。じゃれついてきた1頭のライオンが突如として野生の本能を露わにし、松島さんの首筋に噛みつき引きずり倒したのです。この襲撃により、第4頸椎を粉砕骨折するという致命的な重傷を負いました。頸椎の損傷は一歩間違えれば全身不随、最悪の場合は即死に至る極めて危険な状態でした。
現地医師の懸命な処置と奇跡的な強運によって一命を取り留めた松島さんでしたが、悪夢はこれで終わりませんでした。事故からわずか10日後の2月7日、ギプスで首を固定した状態で帰国前のインタビュー撮影を行っていたところ、今度は檻の中にいたヒョウが突如パニックを起こして襲いかかり、松島さんの頭部に噛みついたのです。頭蓋骨にヒョウの牙が突き刺さり、肉が裂けるという惨劇でした。
当時の手記や後のインタビューにおいて、松島さんは次のように振り返っています。
「ヒョウの冷たい息が首筋にかかった瞬間、『あ、これで私の人生は終わった』と覚悟しました。ただ、不思議と恐怖よりも『母を残して逝くわけにはいかない』という思いが脳裏をよぎったのを覚えています」
帰国後、長期にわたる絶対安静と壮絶なリハビリテーションが行われました。首の骨が数ミリずれていれば呼吸停止や半身不随に直結していたと主治医が証言するほどの重傷でしたが、神経麻痺などの重篤な後遺症を残すことなく奇跡的な回復を遂げました。現在でも首の可動域への配慮や定期的なメンテナンスは欠かせないものの、日常の歩行や歌唱活動に支障をきたすことなく生活を送っています。