ネット上の掲示板や知恵袋などで最も多くの混乱が見られる論点が、日蓮宗と創価学会の違いです。同じ南無妙法蓮華経を唱えながらも、両者は組織構造、歴史的経緯、さらには教義の核心部分において明確に袂を分かっています。
まず歴史的な背景を押さえる必要があります。日蓮の没後、弟子たちの間で解釈の違いが生まれ、身延山久遠寺を総本山とする伝統宗派の「日蓮宗」と、大石寺(富士門流)を本山とする「日蓮正宗(にちれんしょうしゅう)」などに分かれました。創価学会はもともと1930年に設立された教育・宗教団体であり、戦後は日蓮正宗の信徒組織(法華講)として爆発的な信徒拡大を遂げました。しかし、法主を絶対視する僧侶側と、信徒主体の民衆運動を志向する創価学会側との間で激しい教義対立が生じ、1991年に創価学会は日蓮正宗から破門(公式には信徒資格の剥奪)され、完全に独立した教団となりました。
現在の日蓮宗と創価学会の具体的な相違点は以下の3点に集約されます。
第1に「本仏観(ほんぶつかん=誰を最も根源的な仏と見なすか)」の違いです。伝統的な日蓮宗では、歴史上実在した釈迦牟尼仏(釈尊)を本仏とし、日蓮は法華経を末法に弘める使命を帯びた「宗祖・上行菩薩(じょうぎょうぼさつ)」の再来として位置づけます。一方、創価学会(および日蓮正宗の流れ)では、釈尊の教えは過去のものとし、末法という荒廃した現代において人類を根本から救済する真の仏は日蓮大聖人自身であるとする「日蓮本仏論」を採ります。
第2に「信仰の対象(本尊)」の授与形態です。日蓮宗では身延山をはじめとする各寺院の僧侶から開眼供養された曼荼羅や木像本尊が檀家に授けられますが、創価学会では教団独自に謹刻・印刷された「文字曼荼羅(日蓮正宗第26世日寛上人の書写本尊を学会が認可授与したもの)」を各家庭の仏壇に安置して拝借します。
第3に「儀礼と唱え方」の実態です。南無妙法蓮華経の唱え方において、日蓮宗の寺院法要では「うちわ太鼓(団扇太鼓)」を打ち鳴らしながら、朗々とした節回し(声明)を伴ってゆったりと唱えられる場面が多く見られます。対照的に創価学会の会合や勤行では、木魚や太鼓は原則として用いず、鈴(りん)の音を合図に、力強く一定の高速テンポで直線的に題目を繰り返す「同音合唱」スタイルが定着しています。