膝の皿が外側にずれて動かなくなった場面に直面した際、パニックから力まかせに押し込もうとする行為は絶対に行ってはなりません。脱臼時、膝蓋骨の裏面は大腿骨の突起と噛み合っていることが多く、無理な力を外側から加えると、関節軟骨を大きく削り落としたり、骨を欠損させたりする深刻な二次災害を招きます。
現場における安全な膝の皿がずれる戻し方の手順は、解剖学的アライメントに即した愛護的な整復です。まず本人がリラックスし、太ももの力を完全に抜くことが大前提となります。
第一に、介助者または本人が、曲がったままロックしている膝関節をゆっくりと真っ直ぐ伸ばす(膝伸展位にする)操作を行います。膝を真っ直ぐに伸ばすだけで大腿四頭筋の緊張が緩み、膝蓋骨を大腿骨の溝へ引き戻すスペースが生まれます。この伸展動作だけで「コトッ」と自然に戻るケースが少なくありません。第二に、それでも戻らない場合は、膝を完全に伸ばした状態を保ちながら、外側に飛び出ているお皿の内外縁をやさしく包み、中央(内側方向)へ向かって極めて弱い力でソフトにスライドさせます。強い抵抗や激痛がある場合は即座に中止してください。
整復が完了した、あるいは自力での整復が困難な場合の現場応急処置は、外傷管理の基本である「RICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)」です。保冷剤や氷嚢をタオル越しに当てて炎症を抑え、包帯やタオルを巻いて膝を伸ばした状態のまま固定します。歩行は避け、松葉杖や付き添いを利用して、直ちに医療機関へと搬送してください。