「燃えない金属なのだから、不燃ごみで出せば持っていってくれるはず」という思い込みは、現代の廃棄物処理の現場において通用しません。多くの清掃事務所関係者が頭を抱えているのが、家庭用ごみステーションに無造作に排出される小型〜中型のモーターです。
回収されない最大の理由は、清掃工場の破砕設備を守るための機械的制約にあります。自治体の不燃ごみ処理ラインに設置されている破砕機は、薄いアルミ缶や薄板スチール、プラスチック複合製品などを細かく砕く設計になっています。ところが、モーターのコア(鉄芯)には厚みのある高強度の電磁鋼板が何層も圧入されており、中心には太い焼入れシャフト(回転軸)が貫通しています。これを標準的な回転刃に投入すると、刃が欠損したり軸がロックして破砕プラント全体が緊急停止し、数千万円単位の修繕費用と数日間の操業停止を招く事態になりかねません。
各自治体の不燃ごみ粗大ごみ分別基準を確認すると、多くの地域で「金属の厚みがある製品」や「一定重量(おおむね5kg〜10kg以上)を超える塊」は、指定袋に入るサイズであっても「適正処理困難物」に指定されています。指定袋の口が縛れていても、収集作業員が重みと硬さを手触りで検知した時点で、その場に警告ステッカーが貼られ残されてしまうのが実情です。
また、小型家電リサイクル法との兼ね合いも見落とせません。扇風機や掃除機、ヘアドライヤーといった家電製品の「完成品」であれば、自治体や家電量販店に設置された回収ボックスで無償引き取りされるケースがほとんどです。しかし、中身のモーターだけを工具で強引に取り出して持ち込んでも、ボックスの投入口に入らないばかりか「解体された部品単体は対象外」と断られる事例が後を絶ちません。解体した瞬間に、行政のリサイクルスキームから外れてしまう落とし穴が存在します。