爪メラノーマを疑う上で、皮膚科専門医が最も重視する身体所見の一つがハッチンソン徴候(Hutchinson's sign)です。これは、爪甲に生じた黒色色素が爪の境界を越えて、根元の甘皮(後爪郭)や爪の横の皮膚(側爪郭)、指先にまで染み出すように広がっていく現象を指します。
良性の爪甲色素線条では、色素を作る細胞が爪母の内部に厳密にとどまっているため、爪の外側の皮膚に着色が生じることは構造上あり得ません。もし爪の黒い筋の根元にある甘皮や皮膚が黒ずんでいるのを確認した場合、それは腫瘍細胞が爪母組織を突破して周囲の表皮・真皮へと浸潤している強い証拠となります。この徴候が見られた場合、一刻の猶予もなく専門施設での精密検査が必要です。
また、足の爪メラノーマ初期画像の多くは、親指(母趾)に集中しています。足の爪は普段靴下や靴に覆われており、手元に比べて目視する頻度が低いため、発見が遅れがちです。爪の黒色化が進むだけでなく、爪が縦に割れる、爪甲が浮き上がる、爪の一部が崩れるといった「爪の破壊現象」を伴っている場合、すでに腫瘍が爪床を破壊しながら進行している段階が疑われます。
爪メラノーマ進行速度については、患者の病理組織型によって大きな差があります。表皮内にとどまる初期の「上皮内がん(in situ)」の段階では、年単位でゆっくりと黒い線の幅が広がるケースも存在します。しかし、一度真皮層への垂直浸潤が始まると、数ヶ月の間に急速に病変が隆起し、リンパ節や他臓器への転移リスクが跳ね上がります。「何年も前からあるから大丈夫」という油断は禁物です。