ポピーが持つ「眠り」や「幻惑」という象徴の根源は、古代のギリシャ神話へと遡る。豊穣の女神デメテルが、愛娘ペルセポネを冥界の王ハデスに連れ去られ深い絶望に打ちひしがれていた際、睡眠の神が彼女の苦痛を和らげるために与えたのがポピーの花であったとされる。
また、夢の神であるモルフェウスは、漆黒の羽を広げ、手にポピーの茎を握りしめて人々に夢を見せたと伝えられている。麻酔や鎮痛の効果を持つポピーの樹液は、古代人にとって「苦痛からの解放」であると同時に、「意識を奪う静かな恐怖」でもあった。この古代の記憶が、現代まで引き継がれる静謐でどこか妖艶な象徴性の背景となっている。