歴史をさらにさかのぼると、この時代のビジュアル表現の根底には視覚芸術の革新があった。日本のグラフィックデザインや視覚文化の礎を築いた竹久夢二の美人画は、憂いを帯びた独特の叙情性で当時の若者たちを虜にした。一方、日本初の職業漫画家とされる北沢楽天は、新聞や雑誌の誌面で鋭い社会風刺やユーモアを盛り込んだ作品を発表し、近代漫画の祖として大きな足跡を残した。
二人が打ち立てた「抒情」と「風刺・エンターテインメント」という二大潮流は、のちの漫画家たちに多大な影響を与えた。大正浪漫と呼ばれる華やかで儚い美意識は、絵画とグラフィックの境界線を溶かしながら、日本のポップカルチャーの遺伝子として脈々と受け継がれている。