現在の姿しか知らない観光客にとって最も驚くべき事実は、「完成当初、このオブジェは海に浮かんでいた」という点でしょう。
誕生当初は紋別港の沖合約500メートルの海上にアンカーで係留されており、冬になると本物の流氷群の間から真っ赤な爪がニョキッと顔を出すという、息を呑むような幻想的アートを展開していました。
しかし、オホーツク海の激しい荒波と流氷の強烈な圧力に晒され続ける過酷な環境下で、オブジェの損傷や係留ワイヤーの破断といった安全管理上の課題が浮上。展示期間終了後の一時撤去を経て、市民や観光客から「紋別のシンボルとして恒久的に残してほしい」という熱烈な要望が寄せられた結果、陸揚げされて現在の場所へ移設される運びとなりました。
海から陸へと舞台を変えたカニの爪は、四半世紀以上の時を経た今もなお、塗り替えや補修などの丁寧なメンテナンスを受けながら大切に保存されています。