世界中の異なる文化、異なる宗教を持つ人々が、なぜ驚くほど似通った臨死体験を語るのだろうか。暗いトンネルの通過、圧倒的な多幸感、そして「境界線」の知覚。かつては、死の恐怖を和らげるために脳が分泌するエンドルフィンなどの脳内麻薬が原因だと説明されていた。
しかし、近年の研究はその単純な説明に疑問を投げかける。心停止状態にあり、脳への血流が完全に途絶えているはずの患者が、手術室内の医師の会話や、機器の配置を正確に記憶していた事例がいくつも報告されているからだ。肉体的な感覚器が機能していない状態で、彼らは「何」を使って周囲を観察していたのだろうか。この謎は、従来の唯物論的な神経科学を今も揺るがし続けている。