このレストランの成り立ちを語るうえで、加藤家の歩みを外すことはできない。1957年、歌手の加藤登紀子氏の両親である加藤幸四郎氏と母・淑子氏によって、旧満州ハルビンでの生活経験をもとに創業された。ハルビンは当時、多くのロシア系住民が暮らす国際都市であり、本場の味と家庭的な温もりが同居する特別な食文化が息づいていた。
現在、運営母体である株式会社スンガリーが守り継ぐのは、単なるノスタルジーではない。ジブリ映画『紅の豚』でマダム・ジーナの声を演じ、主題歌を歌った加藤登紀子氏の凛とした佇まいとも重なるような、凛然たる気品が料理の一皿一皿に宿る。時代が変わろうとも、創業者夫妻がハルビンの地で出会った「人をもてなす喜び」は、レシピの端々に息づいている。