強力な法的保護を持つ永小作権ですが、「現代の現場でも使われているのか」という疑問に対しては、実務上新規で設定されるケースはほぼ存在しないというのが実態です。
その背景には、戦後の農地改革と昭和27年に制定された「農地法」の影響があります。戦後の農地改革によって不在地主の農地が小作農へ強制的に売り渡され、自作農が中心の社会へと転換しました。さらに農地法が制定されたことで、通常の農地賃貸借であっても小作人(借主)の権利が強力に保護される仕組みが整ったため、地主にとって権利が強すぎる永小作権をあえて設定する理由が失われました。
現在、農地を貸し借りする際は、農地法3条に基づく許可を得た賃貸借契約や、農業経営基盤強化促進法に基づく「利用権設定(農地バンク等)」を活用するのが一般的です。そのため、不動産業界の実務で「永小作権の設定契約書式」を取り交わす機会はほぼ皆無となっており、登記簿謄本上に残っている過去の遺産として見かける程度にとどまっています。