本作の説得力を支えているのは、冷徹なまでのリアリズムと叙情性を兼ね備えたキャラクター描写です。作中に登場する重要人物たちは、単なる歴史の記号ではなく、強烈な個性と葛藤を抱えた人間として命を吹き込まれています。
作中で特に印象的な主要人物の構図は次の通りです。
・裕仁親王(昭和天皇):類まれな記憶力と聡明さを持ちながら、伝統と近代化、国家の重責に引き裂かれる主人公。
・乃木希典:学習院院長として厳格に裕仁を導き、自らの死をもって武士道の覚悟を遺した師。
・足立タカ(鈴木タカ):幼少期の裕仁を慈しみ育て、のちに終戦時の首相となる鈴木貫太郎の妻となる運命の女性。
・良子女王(香淳皇后):宮中の権力闘争に巻き込まれながらも、裕仁と確固たる絆を育む生涯の伴侶。
・大正天皇(嘉仁):病弱でありながらも息子への深い愛情を抱き、時代の激流に翻弄された先代天皇。