1776年6月、大陸会議は独立宣言の起草を目的とする「5人委員会」を指名しました。メンバーはジョン・アダムズ、ベンジャミン・フランクリン、トーマス・ジェファーソン、ロジャー・シャーマン、ロバート・リビングストンです。その中で実際の執筆を託されたのが、文筆家として抜きんでた才能を持っていた弱冠33歳の青年弁護士、トーマス・ジェファーソンでした。
ジェファーソンはフィラデルフィアの下宿先でわずか十数日の間に初稿を書き上げました。アダムズやフランクリンの助言を受け、大陸会議での激しい修正審議を経て完成した文書は、単なるイギリス国王への不満リストにとどまらず、人類史に刻まれる政治哲学の金字塔となったのです。
独立宣言の構成と重要部分の日本語訳要約
独立宣言は大きく4つのパートで構成されています。
- 前文(理念の提示):国家の独立を決断した理由を世界に説明する義務があることを宣言。
- 人権宣言(普遍的原理):すべての人間が生まれながらに持つ不可侵の権利を定義。
- 国王の暴政の告発(27項目の罪状):ジョージ3世が行った議会の解散、不当な課税、裁判権の侵害、軍隊の駐留など具体的な不当行為を列挙。
- 独立の布告:13植民地はイギリス国王への忠誠義務を完全に解かれ、自由で独立した合衆国となる旨の厳重な宣言。
中でも世界中に衝撃を与え、現代の民主主義の根幹となったのが第2段落の有名な一節です。
「われわれは、以下の諸事実を自明の真理であると信じる。すべての人間は生まれながらにして平等に造られており、造物主によって一定の奪い難い権利を与えられている。その権利には、生命、自由、そして幸福の追求が含まれる。」
「これらの権利を確保するために、人類の間には政府が組織されるのであって、その正当な権力は被統治者の同意に由来する。いかなる形態の政府であっても、これらの目的に反するものとなったときには、それを改変し、または廃止して、自らの安全と幸福を最もよく実現するような新たな政府を樹立することは、人民の権利である。」
この思想は、イギリスの哲学者ジョン・ロックが提唱した「社会契約説」と「自然権」の概念を色濃く反映しています。ロックが挙げた「生命・自由・財産」のうち、「財産」をより普遍的で高次な「幸福追求権(the pursuit of Happiness)」へと昇華させた点に、ジェファーソンの卓越した先見性と人間観が凝縮されています。