野口健の名を世界に知らしめたのは、単に山に登る技術だけではない。かつて「ゴミ捨て場」と揶揄されたエベレストの惨状に憤りを覚え、自ら立ち上げたエベレスト清掃登山プロジェクトは、世界の登山界に激震を与えた。命の危険を冒して大量の廃棄物を回収する活動は、国内外のメディアで大きく報じられた。
この遠征で培われた現場主義の支援精神は、後に一般社団法人ピーク・エイドの設立へと結実する。ヒマラヤのシェルパ遺族への教育支援や、ネパール大地震における避難所建設、さらには日本国内での災害被災地支援に至るまで、その活動範囲は多岐にわたる。彼の足跡は、山頂を目指すクライマーから、命を守る社会起業家への脱皮でもあった。