燃費や実用域トルクで劣るにもかかわらず、NAエンジンが今も支持される理由の核心は、数値化できないドライバーの五感との同調性にあります。コーナーの立ち上がりでアクセルペダルを数ミリ踏み込んだ瞬間、車体がタイムラグなく姿勢を変えるアクセルレスポンスと高回転の魅力は、現代の高度に洗練されたツインターボや電動アシストモーターをもってしても完全に再現することは困難です。
かつてホンダのF1第2期開発に携わったエンジン設計者は、当時の手記の中で「出力の絶対値を引き出すこと以上に、ドライバーの足裏とスロットルバルブがワイヤーで直結されているような有機的一体感を突き詰めることこそが、内燃機関開発の神髄であった」と振り返っています。過給圧の上昇を待つ「間」がなく、右足の踏み込み角度と駆動輪へのトルク伝達が1対1で直結する感覚は、意のままに車を操るピュアスポーツの原点といえます。
さらに見過ごせないのが、官能的な排気音とフィーリングの真相です。ターボ車の場合、排気ガスがマフラーに届く前にタービンブレードを通過して運動エネルギーを奪われるため、どうしても排気圧力が減衰し、音がこもったり消音されたりする傾向があります。対するNAエンジンは、エキゾーストマニホールド(等長タコ足)から排気管へとストレートに排気脈動が抜けていくため、金属的で澄んだ美しい高音を響かせます。タコメーターの針が7,000rpm、8,000rpm、9,000rpmへと跳ね上がるにつれて、管楽器のように澄み渡るサウンドと加速度が二次曲線を描いて高まる高揚感——これこそが、愛好家が「NAでなければ味わえない麻薬的な快感」と表現する領域です。