シールを剥がした際にベタベタが残る最大の要因は、粘着剤の「凝集力」と「投錨(とうびょう)効果」のバランス崩壊にある。工業用テープやラベルに使用される粘着剤の多くは、アクリル系樹脂や合成ゴム系ポリマーを主成分としている。これらは完全な個体ではなく、極めて粘度の高い半流動体として対象物の微細な凹凸に入り込み、分子間力によって密着している。
シールが綺麗に剥がれる条件は、粘着剤同士が結びつく力(凝集力)が、対象物と粘着剤が引き合う力(接着力)を上回っていることだ。しかし、製造から長期間が経過すると、空気中の酸素や紫外線、温度変化によってポリマーの劣化・架橋反応が進み、粘着層が脆くなる。その結果、引き剥がす張力に耐えきれず、基材の紙と粘着層の途中で千切れてしまう「凝集破壊」が発生する。これが、シールの粘着剤が残る理由の物理的実態である。
特に近年の製品は、流通時の剥がれ落ちを防ぐために初期粘着力(タック性)が高く設計されているものが少なくない。力任せに爪で擦ると、微細な凹凸へ粘着剤をさらに押し込む結果となり、周囲のホコリを巻き込んで黒い輪郭線を作ってしまう。綺麗に除去するためには、物理的な力ではなく、化学的なアプローチで粘着剤のポリマー結合を緩めることが不可欠となる。