入念な警戒を怠らなかったとしても、視界不良の雨中では突如として熊と対峙する事態が起こり得ます。その局面で生死を分けるのは、状況に応じた冷静な初期初動です。雨の日に熊と遭遇した時の対処法を距離別に整理します。
【パターンA:20メートル以上離れている場合】
熊がまだこちらに気付いていない場合は、決して刺激してはなりません。大声を上げたり走って逃げたりせず、熊の動向を視野に収めながら、静かにゆっくりと後退します。風下へ回り込まれないよう注意しつつ、障害物の陰に身を隠しながら安全圏まで距離を取り、ルートを変更して速やかに下山を開始してください。
【パターンB:10メートル前後の至近距離で鉢合わせた場合】
絶対に背中を向けて走って逃げてはなりません。熊は逃げるものを反射的に追いかける捕食本能を有しており、時速50キロメートル近いスピードで一瞬にして追いつかれます。熊から目を離さず(直視して睨みつけるのではなく、視野の中心に捉え続ける)、両手を高く上げて自分を大きく見せながら、落ち着いた低い声で語りかけるように後退します。同時に熊撃退スプレーの安全装置を外し、両手で構えてノズルを熊の鼻先へ向けます。
【パターンC:突進を受け、接触が避けられない場合】
スプレーを全開で噴射しても突進が止まらない、あるいは抜刀する猶予すらなく数メートルから襲いかかられた場合は、即座に「クラーク姿勢(防御姿勢)」を取ります。地面にうつ伏せになり、両手で首の後ろと頭部を固く抱え込みます。ザックを背負っていれば、それが背中を守る盾となります。足を開いて踏ん張り、体を裏返されないよう腹部と内臓を死守してください。顔面や頸動脈などの致命傷を防ぐことで、生存確率を限界まで引き上げることが現場における鉄則です。
これらを踏まえた事前の安全設計こそが、登山 雨の日の熊対策の根幹を成します。