メディアで報じられる公職選挙法違反ニュースを見るたび、「なぜプロの政治家や陣営が初歩的なミスを冒すのか」と首を傾げる読者も多いはずです。捜査関係者の証言を丹念に辿ると、違反の背景には日本固有の選挙風土と、刑法や日常道徳とは異なる極めて厳格な法律の建て付けがあります。
公職選挙法が禁止する行為は多岐にわたりますが、現場で特に摘発頻度が高い類型には以下のような特徴があります。
代表的な違反行為の筆頭が、公職選挙法違反買収です。候補者や運動員が票の取りまとめを依頼して現金を配る行為はもちろんのこと、有権者に対して高価なお茶菓子や酒類を振る舞う行為、さらには選挙事務所での陣中見舞いに対する過剰なお返しも買収罪に該当します。過去の公職選挙法違反事例でも、地元の有力後援組織幹部へ「陣中見舞い」の名目で数十万円の現金を配った陣営幹部が即座に逮捕され、政治家本人が辞職へ追い込まれる事態が繰り返されてきました。
一般のボランティアが最も陥りやすい落とし穴が、公職選挙法違反戸別訪問です。日本の公選法(第138条)では、選挙に関して投票を得る目的で有権者の自宅や職場を戸別に訪問して投票を依頼する行為を原則として全面禁止しています。「熱意を伝えるために近所を一軒ずつ回って挨拶した」という行動は、海外の選挙では合法的な戸別遊説(ドアノック)として一般的ですが、日本国内では明確な犯罪行為として取り締まりの対象となります。
選挙の告示日前に「特定の候補者への投票を呼びかける」行為は、公職選挙法違反事前運動に当たります。政治活動としての街頭演説やポスター掲示は認められているものの、一歩踏み込んで「今度の選挙では〇〇をお願いします」と発言した瞬間、違法性が生じるという極めて曖昧な境界線が、現場でのトラブルを誘発し続けています。