腕の内側に痛みを感じた際、一般に広く信じられているセルフケアの中に、治療を長期化させる決定的な誤解が潜んでいます。
最大の盲点は、「痛む場所そのものが根本原因ではない」という点です。例えば、腕の内側全体のだるさや小指側の痛みを訴える患者の診察を行うと、腕自体には器質的異常がなく、デスクワークによる巻き肩や猫背姿勢によって斜角筋や小胸筋が硬縮し、鎖骨下で神経と血管が締め付けられている「胸郭出口症候群」であるケースが頻発しています。この場合、いくら前腕に湿布を貼ったり腕を揉んだりしても、大元の絞扼部位が解放されないため症状は一向に改善しません。
また、「温めるべきか冷やすべきか」の判断ミスも病状悪化を招く要因です。動作時に鋭い痛みが走る「炎症の急性期」において、良かれと思って入浴時に熱い湯船で揉んだり温熱シートを貼ったりすると、局所の血流過多と血管拡張により炎症反応が促進され、夜間痛が増悪します。局所の熱感や自発痛がある急性期は局所冷却(アイシング)を徹底し、鈍い張りが続く慢性期に入って初めて温熱療法へと切り替えるのが医学的な原則です。