市販されているわらび餅の多くは、サツマイモやタピオカのデンプンを主原料としている。しかし、京都の老舗がこだわる「本物」は全く異なる。山深く自生するワラビの地下茎から、極寒の時期にわずかしか精製できない希少な本わらび粉を100%使用するのだ。
銅鍋に本わらび粉と水、砂糖を合わせ、強火で一気に練り上げる過程は、まさに真剣勝負。職人の手が止まることはない。熱が加わるにつれて無色透明から漆黒へと変化し、独特の強い粘りと弾力が生まれる。出来上がったわらび餅は、賞味期限がわずか数分とも称される繊細な生菓子だ。口に入れた瞬間に広がる芳醇な風味が、本物だけに許された官能の世界へと誘う。