都市伝説がここまで強固に信じられた背景には、公式エピソードのなかに「子供向けとは思えないほど絶望的なラストシーン」が存在した事実も大きく影響しています。その筆頭が、1956年に公開された第103話『ブルースな気分(原題:Blue Cat Blues / ブルーキャットブルース)』です。
このエピソードは、普段のギャグタッチとは一線を画す陰鬱なジャズピアノの旋律とともに幕を開けます。白い美しいメス猫に全財産を注ぎ込んで求婚するも、大富豪のライバル猫・ブッチに完敗したトムは、失恋のショックからアルコール(作中ではミルク)に溺れ、ボロボロになっていきます。ジェリーの献身的な慰めも届かず、物語のラストでトムは踏切の線路の上に座り込み、自ら命を絶とうと列車を待ちます。
さらに追い打ちをかけるように、ジェリーもまた信じていた恋人ネズミの裏切りを知り、絶望のあまりトムの隣に腰を下ろします。遠くから近づいてくる列車の汽笛と轟音が響くなか、画面が暗転して「ジ・エンド」を迎えるという、映画史に残る鬱エンドです。この「踏切で列車を待つ結末」は紛れもない公式作品であり、これが後年のファンによって「公式のバッドエンド最終回」として記憶に刻まれる要因となりました。