ネット上の情報や飼育フォーラムには、「あくびをしていても、エサを食べていて糞が出ていれば大丈夫」「換羽期だから眠いだけ」といった安易な楽観論が散見されます。しかし、ここには野生動物特有の生物学的トラップが隠されています。
自然界において被捕食者(獲物)であるセキセイインコは、弱っている姿を敵に見せた瞬間、群れから排除されたり捕食者に狙われたりします。そのため、激しい激痛や呼吸苦があっても、飼い主の視線を感じた瞬間にシャキッと姿勢を正し、エサを食べるふりをする「マスキング現象(病気の隠蔽)」を完璧に演じます。
「止まり木に止まっているから健康」「エサ箱にいるから問題ない」という人間の主観的観察は、小鳥の健康診断において最も危険な先入観です。観察すべきは、飼い主が見ていない隙の脱力した姿、底網に落ちている糞の性状(未消化便や水分過多便の有無)、そして何よりも毎日決まった時刻(朝の給餌前)にキッチンスケールで計測する0.1グラム単位の体重推移です。体重が前日比で1グラム以上減少している中で発生するあくび連発は、紛れもないエマージェンシーです。