鶏もも肉を焼く際、多くの人が「強火で表面を焼き固めれば肉汁が閉じ込められる」と考えがちです。しかし、肉のタンパク質は60〜65℃を超えると急激に収縮し、内部の水分(肉汁)を一気に外へ押し出してしまいます。強火で一気に加熱すると、肉が縮んで固くなるだけでなく、染み出た水分が皮側に回り込んで蒸し焼き状態になり、皮がふやけてしまうのです。
プロが実践する「皮パリ・中ジューシー」を実現する基本手順は、以下の3ステップに集約されます。
① 焼く前の「筋切り」と「徹底的な水分拭き取り」
冷蔵庫から出した鶏もも肉は、厚みが均一になるよう包丁で開き、白い筋や余分な黄色い脂肪を切り取ります。最も重要なのがキッチンペーパーで表面のドリップ(水分)を完全に拭き取ることです。表面に水分が残っていると、熱エネルギーが水分の蒸発に奪われ、皮を香ばしく焦がす「メイラード反応(140〜160℃)」が遅れてしまいます。
② コールドスタート(冷たいフライパンに皮目を下にして置く)
油を引かずに、冷たい状態のフライパンへ鶏もも肉の皮目を広げて密着させます。火をつける前から肉をセットすることで、フライパンの温度上昇とともに皮の皮下脂肪がじわじわと溶け出し、「鶏肉自身の脂で皮を揚げる」状態が作られます。余分な油を使わないため、ヘルシーかつ脂っぽさが残りません。
③ 弱中火で「皮目8割・身2割」の火入れ
点火後は弱中火(パチパチと静かな音が立ち続ける程度の火力)をキープします。上からアルミホイルをかぶせ、水を入れた小鍋や耐熱皿などを重しとして乗せると、反り返りやすい皮が底面に均一に密着します。加熱時間の目安は皮目側で約8〜10分、裏返して身側を約2〜3分。全体の加熱の8割を皮目からじっくり行うことで、身に直接強い熱を当てずにふっくらと火を通すことができます。
焼き上がりの直前、フライパンに溜まった余分な脂をキッチンペーパーでこまめに吸い取ることも忘れてはならないポイントです。脂が溜まりすぎると皮が脂を吸って重くなり、食感が損なわれます。