ネット上で「市販の甘酒は効果ない」と断言される最大の理由は、消費者が期待する「生きた酵素」が製品中にほとんど残っていない点にあります。テレビの健康番組やWEBメディアでは「甘酒に含まれる数百種類もの酵素が消化を助け、体内を活性化する」と盛んに喧伝されてきました。しかし、スーパーの常温棚で数ヶ月も日持ちする紙パックや瓶入りの市販品を手に取った瞬間、その期待は構造的に裏切られることになります。
食品衛生法上、常温流通する清涼飲料水は65度以上で数分間、あるいはそれと同等以上の加熱殺菌処理が法的に義務付けられています。麹菌が生成するアミラーゼやプロテアーゼといった主要な酵素タンパク質は、熱に極めて脆弱です。一般に60度を超えると急激に変性を起こし、65度〜70度以上の環境ではほぼ完全に失活(活性を失うこと)します。つまり、常温販売されている一般的な市販甘酒を飲んでも、「生きた酵素が腸に届いて代謝を促す」という現象は原理的に起き得ません。
ただし、ここで科学的に是正すべき誤解があります。それは「酵素が失活した=栄養価値がゼロになったわけではない」という点です。飲む点滴と呼ばれる栄養成分の真実を紐解くと、麹菌が発酵の段階で米のデンプンを分解して作り出したブドウ糖、ビタミンB群(B1、B2、B6、ナイアシン等)、必須アミノ酸群は、加熱殺菌を経ても壊れることなく液中にしっかり溶け込んでいます。消化吸収が極めて早いエネルギー補給源としての機能は健在です。
結局のところ、「生きた酵素による特別なデトックス効果」を過大に信じ込んで市販品を飲んだ層が、「劇的な変化など起きない」と失望し、「効果ない」という極端な口コミを拡散している構図が浮かび上がってきます。