美術品としての評価が極めて高い一方で、初見の参拝者に強烈な動揺を与えるのが、重要文化財に指定されている空也上人立像です。SNSや掲示板では「六波羅蜜寺は不気味」というネットの反応が散見されますが、その視線の中心には常にこの像の特異な姿があります。
そもそも、なぜ空也上人の口から仏が出ているのか。これは鎌倉時代の天才仏師・運慶の四男である康勝(こうしょう)が手がけた肖像彫刻の傑作であり、「南・無・阿・弥・陀・仏」という6文字の名号を唱えると、その一声一声が阿弥陀如来の姿に変化したという霊験譚を、立体彫刻として極限まで具現化したものです。仏教の教えを人々に分かりやすく視覚化するための高度な宗教芸術表現でした。
痩せ細った体に粗末な鹿皮の衣をまとい、首から鉦(かね)を提げ、鹿の角がついた杖を突いて草履履きで歩く空也の姿は、徹底したリアリズムで作られています。ガラスの玉を眼球に埋め込む「玉眼(ぎょくがん)」が施された瞳は、まるで今まさに目の前で呼吸し、念仏を唱えながら歩み寄ってくるかのような錯覚を鑑賞者に与えます。この生々しい迫真性こそが、信心を持たない現代人の目には「超自然的な異様さ」「生きた幽霊のような怖さ」として映り込む要因となっています。