本作が世界中で愛された最大のエンジンは、主演のソフィア・ヘリンが演じたサーガ・ノレーンという特異なキャラクターの造形にあります。
独特のくすんだオリーブグリーンのポルシェ911を猛スピードで乗り回し、タイトな革パンツにトレンチコート姿。周囲との雑談や社交辞令を一切解さず、職務質問でも同僚との会話でも事実のみを歯に衣着せぬストレートさで突きつける彼女は、典型的な他者とのバウンダリー(境界線)の構築に課題を抱えた人物として描かれます。署内で平然と着替えを行い、性欲も「生理現象」として合理的に処理しようとする彼女の突飛な行動は、当初コミカルに映ります。しかし物語が進むにつれ、その奇行の裏に隠された「妹ジェニファーの死に対する激しい自責」と「母親からの虐待の傷」という凄惨な過去が浮き彫りになっていきます。
ソフィア・ヘリンは当時の海外メディアのインタビューや特番において、「サーガは嘘をつく能力を完全に欠いている。社会的な仮面を被って生きる私たちにとって、彼女の容赦ない正直さは時に残酷でありながら、同時に最も純粋な安らぎでもある」と役柄への深い愛着を語っています。
そんなサーガと奇妙な信頼関係を築くのが、2人の対照的な男性刑事たちです。
- マルティン・ローデ(キム・ボドニア):シーズン1〜2の相棒。感情豊かで情に脆く、女性関係にはだらしがないが捜査の勘は鋭い。サーガに人間関係の機微や気遣いを教えた「擬似的な保護者」であり、互いに欠かせない相棒だったが、復讐心に囚われ転落していく。
- ヘンリック・サブロー(トゥーレ・リントハート):シーズン3〜4の相棒。数年前に愛する妻と幼い2人の娘が突如行方不明になり、喪失感から薬物に依存しながら、毎夜消えた家族の幻影と暮らす孤独な男。サーガの欠落をありのまま受け入れ、互いの魂の傷を埋め合う同志となっていく。