「会社の健診結果で『1度房室ブロック・要経過観察』と書かれていたけれど、自覚症状が何もないから放置していた。ところがある日、階段を上った瞬間に急に目の前が真っ暗になって倒れ込み、救急車で運ばれたら完全房室ブロックだった」――医療機関の初診外来や知恵袋などの相談コミュニティには、こうした切実な体験談が後を絶ちません。
病棟勤務の看護師たちの間でも、房室ブロックのモニター監視は常に極度の緊張を強いられる業務の一つです。都内の循環器専門病院に勤務するベテラン看護師は、現場の実情を次のように証言します。
「夜勤帯に心電図モニターのHR(心拍数)低下アラームが鳴ったとき、波形画面を見てウェンケバッハ型なら『少し様子を見ながらバイタル測定に行こう』と判断できます。しかし、モビッツⅡ型が出現した瞬間は違います。直前まで心拍数60台で整だった波形が、いきなりQRS波が連続して脱落し、心拍数が20台まで急降下することがあるからです。訪室すると患者様が『急にフッと気が遠くなった』と冷や汗を流している現場を何度も経験しています」
房室伝導の途絶によって脳血流が急激に低下すると、患者は立ちくらみや浮遊感にとどまらず、数秒間の意識消失や痙攣発作を引き起こします。これが、古くから臨床で恐れられている「アダムス・ストークス症候群」の正体です。転倒による頭部外傷や骨折を引き起こすだけでなく、心室補充調律すら立ち上がらなければ心停止(Asystole)から不可逆的な脳障害、あるいは突然死へと straight に直結します。