痛みを完璧に隠し通そうとした御幸でしたが、その異変を完全に見逃さなかった人物が存在します。それが、副主将であり寮の同室でもある倉持洋一でした。
倉持は、御幸が部屋で人知れず湿布を貼り、寝返りを打つことすら苦痛に顔を歪めている日常のわずかな所作から、ただならぬ違和感を察知します。決勝戦当日の朝、倉持は御幸を呼び止め、怪我の事実を問い詰めました。このときの「隠し通せると思うなよ」という倉持の厳しい視線と、御幸の「ここまで来てベンチに下がれるわけがない」という頑なな態度は、作品屈指の緊迫した名シーンとして知られています。
また、データ収集と選手観察を担当していた偵察班の渡辺久規(ナベ)も、御幸のスイングの軌道や仕草から微細な違和感を感じ取っていました。しかし、御幸の凄まじい気迫に圧され、首脳陣への即時報告を躊躇せざるを得ない空気が現場には漂っていたのです。倉持は御幸の強行出場を止めることができなかった後悔と葛藤を抱えながら、グラウンドで誰よりも相棒をサポートすることを心に誓い、運命の決勝戦へ臨むことになります。