ネット上では「道路の舗装工事を手抜きしていたのではないか」「地震でもないのに崩れるのは地盤が軟弱すぎるからだ」といった誤解や推測が散見されます。しかし、この事故の根底にある盲点は、地上から目視点検できる舗装の問題ではなく、地下深くに眠るメガインフラの寿命到来と点検の限界にあります。
下水道管の多くは高度経済成長期からバブル期にかけて急速に整備され、法定耐用年数とされる50年を次々に迎えています。特に今回の大正幹線のように、呼び径4.75メートルもある大口径管は、内部に猛毒の硫化水素ガスが充満し、常に激しい下水流があるため、人間が内部に入って直接クラックや肉厚を調査することが極めて困難でした。
地上からの探査レーダーも、深さ2〜3メートル程度の空洞は捉えられても、地下10メートルもの大深度で発生した空洞化の初期兆候を早期に検知することは技術的に高い壁がありました。「見えない場所で静かに進む侵食」こそが最大の死角であり、道路管理と下水道管理という縦割り行政の連携の隙間を突いた構造的災害であった点が、世間に広く知られていない重大な事実です。