『アンナチュラル』の代名詞ともなったのが、中堂系が劇中で連発する「クソが」という口癖です。放送当時、SNS上ではその荒々しさと独特の哀愁が大きな反響を呼びましたが、この短いセリフ一つをとっても、井浦新の徹底した計算と情熱が注ぎ込まれていました。
脚本を手掛けた野木亜紀子氏のシャープな台本と、塚原あゆ子監督の繊細な演出意図を汲み取った井浦新は、撮影にあたって「単なる怒りや暴言として発するのではなく、中堂が世界に対して抱く絶望ややり場のなさをどう乗せるか」を熟考したと、当時の特番インタビューや公式ガイドブックで明かしています。
実際、第1話で見せた単なる苛立ちの「クソが」から、第8話の将棋盤の火災事件で見せた悲痛な「クソが」、そして最終回で法廷に立つ高瀬の前にした静かな怒りの「クソが」まで、そのトーンと息遣いはすべて緻密にグラデーションがつけられていました。
また、井浦新は役作りのため、私生活から徹底して「中堂系」の身体性を追求しました。UDIラボの解剖室に寝泊まりし、風呂にもろくに入らず着の身着のままで暮らす男のリアリティを出すため、あえて髪を乱雑に伸ばし、肌を荒らし、睡眠時間を削って目の下に自然なクマを作ったという逸話は有名です。ボロボロのドクターコートの着こなしや、猫背で気だるげに歩くフォームなど、細部にわたる身体表現が中堂系の凄烈な存在感を形作りました。