ネット上の簡易的なまとめ記事などでは、「雑渡はすっかり忍術学園の味方」「伊作に甘いだけのギャグ要員」と単純化されるケースが散見されます。しかし、これは作品の根底にあるリアリズムを見落とした重大な誤解です。
雑渡昆奈門は、どこまで行っても「タソガレドキ城の忍び組頭」です。主君・黄昏甚兵衛の利害に反する命令があれば、どれほど情が移っていようと忍術学園と敵対する立場にあります。原作でもアニメでも、雑渡は「忍術学園の味方になったわけではない。伊作くん個人と保健委員会に義理を返しているだけだ」という線引きを徹底して崩しません。
また、伊作側も決して「守られるだけの無力な存在」ではありません。忍術学園の最上級生として、伊作は六年生屈指の体術と鉄双節棍(てっそうせっこん)を操る実力者です。雑渡の好意に甘えることなく、プロの忍としての危険性を常に念頭に置きながら、それでも自らの「医者としての矜持」を曲げない。互いに自立したプロフェッショナルであるからこそ、そこに生じる緊張感と隙間の情愛が尊ばれるのです。